Hilltribesの町、チェンマイ。

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 タイ北部の町チェンマイは14世紀頃に栄えたランナー王国の古都。そして、西のミャンマー、東のラオスなどヒルトライブ(山岳民族)の文化が色鮮やかに反映した町でもあります。今回は、そんなクロスカルチャーを背景にした多様なクラフト作品をタップリ堪能しました。まずは銀製品、それも前回すっかり魅了されたアカ族やヤフ族のバングルに夢中でした。ガッツリとしたファルムと様々な意匠はどれも魅力的。特にぶっといシルバーを力ずくでネジったかのような形は、古い本などでも目にする伝統的なもの。なんだか、ジョージア・オキーフが付けるとよく似合いそうな、シンプルな力強さに満ちています。また、モン族独特の意匠である「鍵型」のペンダントは、とてもユニークな形をしています。伝統的なセレモニーの際、人の魂が体から抜け出ない為に身につけたものだと言われています。それにしても、ネジネジやグルグル巻きなど、プリミティブなデザインの美しさはいつの時代にも通用するモダンな感覚だと再確認。特に古いものが持つパティーナには、抗しがたい「たたずまい」が感じられました。「布」も多様です。市場で売っているチープで鮮やかなチェックを選ぶ楽しさは、時を忘れてしまいそう(この布、後日訪れたエレファント・キャンプで、マフートと呼ばれるカレン族の象使い達が腰巻きに使っていました、場合によってはタオルにも。まさにそれらは北タイのワーク・ウェアだったのです)。それと対極的に凝った刺繍を施した布は、まさに万華鏡の世界です。糸と針を使い、ひとつひとつ丹念にこしらえられたパシン(筒型サロン)やブランケットにはたくさんの思いと時間が詰まっているかのようです。また、モン族のマーケットに行くと、目が回るほど多彩な文様のスカートやバッグが山積みされています。モウモウと揚がる埃と格闘しながら選ぶ気分はサイケデリック。そのモチーフの無限ともいえる組み合わせには、まったくもって「おそれ入谷の鬼子母神」です。モチロン、dosa大好きなウチの奥さん、テンションは、上がりっぱなしでした。
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 もうひとつ、忘れてならないのが「食」。タイ料理と聞いて一般的に思い浮かべられる激辛酸っぱい「トムヤムクン」的な食べものは、実はタイ南部のもの。チェンマイを含めた北部はカオニャオ(モチ米)が特に美味しく、様々な香草を使った多様な食文化はヘルシーで我々日本人にも食べやすいものが多いのです。特に、スパイス使いが巧みで、「あんまり食欲がないなー」などと思っていても、ナンプリックと呼ばれる辛いペーストを付けると肉もご飯もつい完食してしまいます。一回に食べる量が少ないためか、一日に4回とか5回たべる人も珍しくないらしいのですが、その割には肥満体の人はほとんど見かけません。カオ・ソーイ(カレー麺)、ガイヤーン(鳥の丸焼き)、サイウア(ソーセージ)、ソムタム・タイ(青パパイアサラダ)、ジョーグ(すりつぶしたお粥)などなど、数え上げたらきりがない数々の食堂の味。すぐにでも飛行機に飛び乗りたくなる誘惑に駆られそうで恐いくらいなのです。