About organ

Mono Main

organは1999年、自宅ビル4階に出現しました。
音楽をナリワイとしてきた店主は家具屋勤務の奥さんと出会い、デザイン・アイテムのセレクトショップを自分たちのリビング・ルームで展開することにしたのです。まずはイームズからでした。そして、そのアノニマスな形の先にある北欧デザインの存在に気づくのにそれほど時間はかかりませんでした。そうして、デンマーク、スウェーデン、フィンランドを訪れながら自分たちの目と手で確かめつつ商品を選択しはじめました。その際の基準はたったひとつ、「自分がその物に負けているか」ということです。
「物に出会っていいなと思うときは、私が負けた証拠だ」。著書『無尽蔵』における濱田庄司のこの言葉ほど、物との関わり方で的を射たものはありません。続けてこう言っています「勝負は一瞬にして済み、それから貰うものはほとんど済んでいるがそのとき相手になった品は及ぶ限り手に入れて、いつまでも、品物から受けた恩を大事にしたい」。欲しい物への関心が深ければ深いほど、購買への決断は素早いはず。同時に、念願かなったことでなんだか気が済んでしまうものです。そのことについても言っています。「『それから貰うものはほとんど済んでいる』と書いたが、考えてみると、それを機会に、また知らずに反芻を始めているのに気が付く」。いったん手に入れた物が、また新たな関心を呼び起こして無尽蔵な物へ尽きない思いを馳せる。ただし、いくらでもあるから無尽蔵ではないらしく、彼はそれを「ことごとく蔵するなし」と読んでいます。
商品とは、一見わかりやすい物に見えます。しかし、分析してみると、さまざまな理屈やある種の偏屈さでいっぱいであることがわかります。私たちは売買を通して、無意識のうちにそんな世界中の商品と関係づけられています。いわば交換を通じてコミュニケートしているともいえます。
私たちは否応なく消費社会のまっただ中に生きています。ブランドやストーリーにあふれるモノの洪水に今にも溺れそうです。願わくば、無闇に新奇を競わず、自分の目と手を使って、日々の糧となるオブジェに出会えますように。
武末充敏・朋子