Archive for September, 2007

アメリカ西海岸 #02 “Adam Silverman”

September 30th, 2007

 アダム・シルヴァーマンの陶器に初めて出会ったのは、東京のプレイマウンテンだった。

日頃自分が扱っている北欧の陶器とはひと味違った有り様に、正直ちょっととまどってしまった。北欧のヴィンテージと呼ばれる陶器はある程度評価が定まったものが多い。本などを通してあらかじめ勉強し、あとは自分の好みを反映したものを物色、値段に悩みつつ購入すればいい。ところが、現代作家の作品はそうは行かない。自分のセンスだけが頼り、そこが面白い。作品に感じられる過去の誰それの影響をひとりウンヌンし、下世話に将来性もカンガミ、エイヤッと購入するわけである。アダムの作品はカリフォルニアらしい明るさと、民芸にも通じるクラフト感がうまくバランスしていてとても新鮮だった。

今回の旅で、L.A.のAtwaterにあるアダムの工房を訪れることが出来そうだと聞き、とても楽しみにしていた。

 出迎えてくれたアダムは、アレン・ギンズバーグ風のセル・フレーム眼鏡*1をかけたもじゃもじゃ頭で、ヒョロっと背が高くとてもクールな印象。コンパクトな工房にはロクロや窯がいい感じに配置され、間近に迫った展覧会のための作品がまだ素焼きの状態で待機している。壁には益子での写真や大学のペナント、愛娘の絵などがピンナップされ、アーティストらしいインティメートな雰囲気にあふれている。ある壁の面が黄色にペイントされている。彼はもともと建築を学んでいたはず。とすれば、この色はコルビュジェの影響か?などと想像しつつ、いれたてのエスプレッソをアダムの器でおいしくいただく。

なんと至福の時間。

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  • ※1 60年代ビート詩人のトレードマーク的メガネ。いかにも本を読みすぎたという感じが演出できる。昨今、ジョニー・デップ型としてリ・メイク、流行の兆しアリ。今回の買付で、ヴィンテージを数点ゲット。

アメリカ西海岸 #01 “Joshua Tree”

September 27th, 2007

 300年は生きるという奇怪な形の植物ジョシュア・ツリー*1。その名を取った国立公園は乾燥した砂漠地帯に位置している。L.A.から約3時間、途中モダンな別荘地として有名なパーム・スプリングス*2を経由してこの地に向かったのは彫刻家、家具作家アルマ・アレンに会うためである。

2年ほど前、初めてのL.A.で、ヴェニスのアボット・ケニー通り*3 にあったギャラリー”PEARCE”で彼の作品を見て、ブランクーシやアルプの影響を感じ取ることが出来るその不思議なオブジェに興味を持った。

その時はシンプルな木彫だけしか購入しなかったことが心残りだった。木の切り株を思わせるスツールや、アイアン・ウッド*4と呼ばれる固い木を使った小さな生き物のような作品をもう一度見てみたかったのだ。その後、彼はここジョシュア・ツリーにガール・フレンド、ナンシーと愛犬フリッツと一緒に移り、1950年代のキャンピング・カー「ストリームライン」に寝起きしながら、新しいギャラリーと住まい造りに挑戦している最中なのである。それにしても、この荒野で自力で家を建てるとは、フロンティア・スピリットは死語ではなかった。全ての生物がしたたかに生き残るしかないこの過酷な土地が、おそらく彼を魅了したのだろう。古来、人はあえて海、もしくは砂漠を渡ることで他者と出会い、交流し、交易を行ってきた。迫り来る美しい夕闇の中、僕ら遠来の訪問者はまだ電灯も準備されていない暗い建物の中でそのすべすべとしたオブジェの感触を楽しんだのである。そして、アルマの案内で、西部劇のセットに使われたという真っ暗な街並をハイな気分で探検。ふと空を見上げると、僕らはダイヤモンド・ダストのように輝く満天の星にすっかり包み込まれていた。

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  • ※1 一見サボテンの一種みたいだが、ユリ科の植物。この一帯に群生、得意な景観を呈している。U2のアルバム・タイトルにもなっている。
  • ※2 1950年代フランク・シナトラを始め、数々のハリウッド・スター達が別荘を建てた場所。砂漠のまっただ中にプールやゴルフ場、ミッド・センチュリー・モダンな建築物を強引に出現させたアメリカン・ドリームの権化のような所。
  • ※3 アーティスティックなギャラリーやショップが並ぶLAでもユニークなエリア。ここには、今回すっかりお世話になったSOURCEの杉山氏が親 しくするショップ、tortois(トータス)がある。柳宗理,白山陶器、南部鉄器をはじめ、日本のデザイン・アイテムを卓越したセンスで紹介している必見の店。
  • ※4水に沈むという世界一重い木材、アイアン・ウッド(うりん)。彼自身が砂漠で愛犬フリッツと一緒に採取したもの。