「備前へ」
倉敷と直島は実は近いらしいことを知り、念願だった大原美術館とベネッセ・ミュージアムに行ってきました。久々に乗った新幹線の速さに驚きつつ、車窓や駅弁を楽しむ間もなく備前、岡山に到着。ローカル線を乗り継ぎ、小さな渡船でまずは直島へ。「日本の地中海」といわれるだけあって、日差しが強く、小さな島全体がキラキラ乱反射していました。島々が重なり合い、対岸にかすんで見える四国、高松の街が意外に近いのにビックリ。地中海というより、これはやはり日本的な風景です。埠頭には草間弥生のカボチャ、小さな入り江には大竹伸朗の船、切り立った岩場に杉本博司の写真など、島中にアート作品が点在していて、うっかりすると見過ごしてしまいそう。地中美術館は休館日のため、ベネッセだけの見学。でも、ジャクソン・ポロックやデビッド・ホックニーなど現代アートの傑作がゆったりとした空間の中で充分楽しめました。大きな石に寝っ転がるスペースでぼんやり流れる雲を眺めていると、空にうっすらと虹が架かっていましたっけ。景観にとけ込んだかのように建築やアートが在るというのはとてもいいものです。

大原美術館に興味を持ったのは、濱田庄司のコレクションに惹かれてのこと。本館の名画はそこそこに、足はついつい陶芸館へと向かいます。濱田をはじめ、バーナード・リーチ、河井寛次郎、富本憲吉など、民芸運動を通じて交流を深めた名工による作品は、当然ながらとても見応えがあるものでした。でも、それ以上に興味深かったのは、隣接する倉敷民芸館。熊本国際民芸館を作った外村吉之介によって開設されたことがうなずける瀟洒な土蔵には、素朴と洗練のバランスが美しい品々がひっそりとたたずんでいます。倉敷ガラスや、山陰地方の焼き物など「用の美」にあふれたものに打たれました。なかでも、入り口近くにポンと置いてあった竹のスツールに目が釘付けに。学芸員の方に出自を訪ねたところ、くわしいことは不明だが、戦前の台湾製だろうとのこと。無名の工人による手仕事は、とても丁寧で細かく、まるで「ペリアン好み」。しかし、残念ながら現在は入手不可能とのこと。どこにいても、バイヤー根性が出てしまう自分にはあきれます。そろそろ小腹もすいたし、喧噪を離れた、本町という古い通りにある「さくら」という蕎麦屋で”荒ばしり”と呼ばれる旨い地酒を傾けつつ、次なる山陰の旅へと思いを馳せました。



