New York Revisited

ボクにとってのリアルタイムなニューヨークとは、ボブ・ディランのLP『ブロンド・オン・ブロンド』*1だったり、ウディ・アレンの映画『アニー・ホール』*2だったりと、60年代から70年代後半までのイメージを抜け出ていない。アートに触れる今回の旅、といってもジャクソン・ポロックからアンディ・ウォーホルへの流れくらいはかじっていても、それ以降のコンテンポラリーなものはまるで門外漢。ヨゼフ・ボイスと聞いてフィッシング・ベストを思い浮かべるようにかなりミーハー。なので、やはり、まずはお約束、グリニッチ・ヴィレッジへと向かったわけです。ところが20年前、初めてワシントン・スクウェア*3に立ったときと全然様子が違っている。ドッグ・ランなんかで犬が楽しそうに遊んでいて、プッシャーはもちろん、ストリート・ミュージシャンもいない。実にクリーンなもの。カウンター・カルチャー華やかりし頃の怪しいノリは微塵もない。ま、バーまでも禁煙という今のNY、さもありなん。で、しょうがなくSOHOへ向かい、高級デリ”Dean & Deluca”に立ち寄り、カタカナ・ロゴにつられ、オープンしたてのユニクロを覗く。なんだか、日本よりずっとカッコイイ。同じ商品?と思うほど。その後”bloomingdale’s”*4、 “kate spade”へと、なんのことはないヤッピー・ツアーと化してしまった。というか早くもNYのマジックにかかってしまったようだ。
肝心のアート。MOMAとイサム・ノグチ・ミュージアムへ行きましたとも。
MOMAはいろいろとお腹いっぱい。ノグチ・ミュージアムは思ったより作品数も多くいろんなニュアンスが楽しめました。彼が発見した日本的なるものはとは、やはり異邦人としての視点だとあらためて確認。そしてチェルシーのギャラリー街にはビックリ。なんとその数300位あるらしく、アート・ビジネスの存在を強く実感。日本ってアートはビジネスになるのかな。
追い打ちをかけるように、ちょうどオークション当日の”PHILIPPS”でプルーヴェやペリアンの作品を拝見、そしてプライスに仰天。プルーヴェ、ペリアンは、もはや家具ではなくアートなのですか。
スシを独自のスタイルで全くといっていいほど別物に仕立てる手腕で明らかなように、サンプリングとリ・ミックスに長けた街、ニューヨーク。だからアートにしても、ファションにしてもビジネスのヒントには事欠かない。特に”JACK SPADE”の店。小さな店内一杯に、彼の趣味がちりばめられていて、まるでお宅におじゃましたような雰囲気。丁寧に作り込んだお得意のメッセンジャー・バッグ達に混じって鹿の剥製や、プライベートな写真が壁に掛かっていた。ディスプレイというよりも、コラージュしてる感じかな。ガムテープがベタベタ貼られたソファのアイデアはいつか頂きたいもの。
でも、スタッフの対応は、おしなべてクール。といっても、日本的ベッタリ接客が苦手な人にとってはこちらの方がありがたいのかも。そういえば、トライベッカにあるカフェ”Bubby’s”で、大好きな俳優ハーヴェイ・カイテルに遭遇した。実は、5年前のブルータスNY特集で、この店のテラス席でロバート・デニーロと彼がお茶している写真を見て、「絶対行ってやる!」と心に決めていたのだ。でも、まさか本人がいるとは思わなかった。で、気弱なボクはサインもお願いできず、2m離れた席でチェリー・パイとコーヒーを飲みながら必殺の目配せをチラリ。もちろん、何気なくなんだけど、万感の思いを込めて。すると、5、6人の友人と談笑していた彼の目線がボクの目線とガチンコ。ボクは、一瞬にして『タクシー・ドライバー』のジョディ・フォスターになってしまった。彼は、あの優しくも性悪なピンプの目をして、「わかってるよベイビー、はるばる日本からやって来たんだろ」とまちがいなく言っている(ようだった)。視姦され、ヘナヘナになったボクは、彼らが立ち去った後勘定を済ませるとウェイトレスに言った「大好きなハーヴェイ・カイテルに会えて、とてもラッキーだった」と。すると彼女はこう言った「ああ、彼は始終ウチにきてるもの」。
(肝心の買付は、アレキサンダー・ジラルドのテキスタイル、ジョージ・ネルソンのトレイ、ポール・ランドのポスターなどをゲットしました。近々ご紹介します。)
- ※1 1966年発表されたロック史上初の2枚組アルバムで、彼のフォークからロックへの移行を決定的なものにした。数々の名曲が収録されているが、2枚目のB面を全部使った『ローランドの悲しい目の女』がイイ。
- ※2 1977年公開され、ウディ・アレンを一躍有名にしたNYを舞台のペーソスあふれるラブ・コメディ。ダイアン・キートンのボーイッシュなファションも素敵だった。Da Di Da…。
- ※3 60年代、ヒッピー達の間で「NYで困ったらワシントン・スクエアへ行け」という言葉があった。ちなみに、TOKYOで困ったら新宿「風月堂」だった。
- ※4 1972年に創業されたニューヨーカー御用達の高級デパート。従来の百貨店とは違ったセレクトとディスプレーで話題を呼んだ。買い物袋”big brown bag”のロゴは秀逸。


