パリの居心地。

 Img 3645アントワープに比べるとパリは大都会。人は忙しく、いたるところ喧噪だらけ。そんなことは分かっていてもやっぱり訪れてしまう。約束した椅子や棚を引き取るという大切な仕事もある。それに今回は知人が紹介してくれたゲストハウスで7日間過ごせるのだ。博物館やシネマテークへも行きたいし、たまにはメトロの暗闇ではなくバスに乗って晩秋のパリを味わってみたい。とはいえ、まずはYODEL5号『フランスやつれ』でインタヴューさせていただいた佐藤絵子さんの新しいギャラリーへ。ゲストハウスから歩いて5分、北マレの路地に面したところに<sometime Studio>が見つかった。
 Img 0013 その小さなスペースには絵子さんの世界がギュッと詰まっていた。ちょうどイラスト展が行われていたのだが、もうしわけない、もはや僕の目は椅子や陶器、本などに釘付け。はやる心を抑えつつ近況をうかがってみた。まずは3月の震災へのチャリティーとして、彼女が100人のアーテイストへ依頼したイヴェント”100 masques pour le Japon “。主にフランスで活躍するアーティスト100人にマスクを送って作品化してもらい、装飾美術館で展示し、最終的にはオークションを行い売り上げを寄付するというプロジェクトを9月にやったばかりとのこと。面識がなかった山本耀司さんも即座に賛同してくれたらしく、オークションの最高落札価格も彼の作品だったとのこと。といっても、どれも通常よりずっと低い200ユーロという最低落札価格からスタートし、1200ユーロで落札なのでかなり破格。利益優先ではないオークションなのである。もうひとつの絵子さんの話題は、12月15日に日本のピエ・ブックスから発売になる『パリの一番』という本。過去にパリのガイド本を出さないかというオファーはあったものの固辞してきた彼女が今回引き受けたのにはわけがある。「パリで一番細い路地」や「一番美しいパリが見える場所」など、あくまで彼女の視点がとらえたパリをソッと耳打ちするものになるはず。出版記念で来日の予定もあるらしく、福岡にもぜひ、と願う次第。
 Img 2655 肝心の買付では、パリ市内サン・ドニで行われた蚤の市がなかなか良かった。有名なヴァンブやクリニャンクールは最近さっぱりイイものが少なくなっていた矢先なので、久しぶりに時間を忘れて物探しをすることができた。観光客が少なく地元の人が多いということもあり、ここでは結構気前よく値引きをしてくれるおじさんもいて、蚤の市本来の醍醐味が味わえるということなのだろう。ただし英語ダメなひとがほとんどなので「ノー、フランセーズ」を連発しながら数字をやり取りするしかない。もっともっと買いたかったのだが、いかんせん荷物の重量リミットはとっくに超しているので重いものは涙をのんで我慢することに。

 Img 3342仕事の合間をぬって訪れたのは<Musée des Arts et Métiers(工芸・技術博物館)>。技術革新に対する人間の熱意と工夫が生み出した様々な道具が展示された館内には不思議な物体がそこかしこに。なかには蚤の市で見かけるようなモノがあったり、このカタチは誰それのオブジェにソックリだなー、と驚いたり、科学的好奇心がないボクは勝手に楽しんでしまった。カルチェラタンにある映画館では70年代J.P.ベルモンド主演の映画を観ようと思ったのだが、日にちが合わず断念。食事はほぼ毎日エスニック料理にトライ。パリには世界各国の食べ物屋があるのも嬉しい。レバノン・サンドイッチ、中国の火鍋、そしておなじみベトナムのフォー。日本食なしでも充分生きて行ける街なのである。