2026, June

ドイツの大掴み、その1。

ひょん | カルチャー 旅 社会科
DATEJun 28. 26


先月の<POPEYE Web>に4回に分けてエッセイもどきを書かせてもらった。お題は「靴のままの暮らし”武器は捨ててお入りなさい”」だ。そのなかで自分は中学生のころから日本地図より世界地図を眺める方が好きだったことを思い出した。でオトナになると、仕事にかこつけて、今までにいろんな国へ行って「外部」をうろついた。きっと「内部」でウジャウジャ考えるとウッパ詰まってしまうからだった。今回もそうだった。ドイツってどいつが住んでいるのか、少しだけ大掴みできた気がする。

ヴァイマールは前まではワイマールと呼ばれていたが、どっちでもかまわない。ぼくには死ぬまでに行きたい特別な場所だったからとうとう行ってきたまでのことだ。
福岡から羽田へ。フィンエアに乗り換えてヘルシンキへ13時間。そこで3時間待ちで乗り継ぎフランクフルトに着き一泊し、次の日の朝に列車でヴァイマール。なかなか過酷な移動ではあった。

実はヴァイマールの前にアイゼナハという町へ行った。ヨハン=セバスチャン=バッハ一族の家が保存されている町だからといっても、発音はバックと言わなきゃ通じないことはない。バッハでもOK!
そこでは17世紀の鍵盤古楽器を見学し、案内人のおじさんがいくつかバッハの曲を実演してくれたのは、うれしかった。そのおじさんの説明によると、バッハは教会でのオルガンの「即興」が得意だったということ。ジャズじゃあるまいし譜面通りの音楽だと思っていたから意外だった。ドイツ人って生まれつき真面目なんじゃないの。

当時のドイツは宗教改革でプロテスタントになっていたので、ガチガチのカトリックとは違った音楽だったはず。今となっては古典だと言われるバックの音楽だけど、いってみれば、その後の黒人のゴスペルみたいな「神との対話」としてのニューウェーブだったのか。つまりフツーの人間の感情を大いに揺さぶってくれるグルーヴがある。たとえば、グレン・グールドの解釈による「平均律クラヴィーア曲集」を聴くと、もはやファンキー以外の何ものでもないし。それっていいじゃないですかまったく。
そう言えば、ミュージアムショップでなにがしか購入した際に入れてくれたショッピンバッグの肖像画だ。広く知られたバッハの肖像画は、とても厳格なバロック音楽の聖人顔をしているが、こちらはグッと優しくて潤んだ目をしているではないか。美しいメロディーで泣かせてくれる親戚の叔父さんだったに違いない。

もうひとつ、アイゼナハにはマルティン・ルターが住んだ家がある。彼は、一般人には読めるべくもない”ラテン語”で書かれていた聖書を、この地方の方言に翻訳し出版した人だ。その聖書は、ようやく自分で中身を読み起こした人々によって大ベストセラーとなり、その言葉がドイツ語として共有されはじめ、結果プロテスタントという開かれたキリスト教が広がったといわれている。封建的な国家に、音楽と言葉が起こした民衆革命!ドイツってすごいじゃないか諸君。
つまり、ドイツ人は案外ラジカルで革新的なのだ。

ついでだが、その夜ようやくありついたディナーは、泊まった安ホテルの近所のケバブ屋さんでのファラフェル料理。中東発祥の肉を使わないベジタリアンメニューにうちの奥さんは大喜び。アルコールなしで、甘い飲み物とヘルシーディナーというラジカル料理に私はがっくり。翌日からのヴァイマールでの美味しいリースリングに期待をかけることにした。

POPEYE Web「TOWN TALK」2026年5月連載

ひょん | デザイン・建築
DATEJun 20. 26

先月、POPEYE Web のミニコラム「TOWN TALK」に5月限定で寄稿しました。[靴のままの暮らし]のことを、全4回です。よかったらヒョイっと訪れて読んでみてください。
POPEYE Web「TOWN TALK」