murmur

「音のある休日」#17

February 5th, 2010

「ピザ・テープス」   ジェリー・ガルシア、デビッド・グリスマン、トニー・ライス
 
Rimg0047-2 ジェリー・ガルシアといえば70年代のロック・バンド、グレートフル・デッドを率いた反体制カルチャーのアイコン的存在。と同時に、アメリカン・ルーツ・ミュジックのよき理解者でもあった。
そんな彼がマンドリンのデビッド・グリスマン、ギターのトニー・ライスと即興的に録音した幻の音源がCDとなって陽の目を見ることになった。黒人、白人ブルースからフォークなど、いずれもリラックスした中にもコクのある演奏が繰り広げられている。
「天国の扉」、「朝日の当たる家」など、おなじみの曲もガルシアの温かい声で聴くと、あらためて胸にじーんと来る。ロックの歴史に刻まれたひだをかいま見るようだ。(西日本新聞131日朝刊)

「音のある休日」#16

February 5th, 2010

ザ・ブライト・ミシシッピー / アラン・トゥーサン
 
Allen New2 ニューオリンズのピアニスト&作曲家アラン・トゥーサン。魂が解放され、天国へ行くことを祝う意味が込められた「セカンド・ライン」という、独特のファンキーなリズムを世に知らしめた名プロデューサーである。その彼がジャズの名曲をカヴァーしたアルバムを発表した。
 デューク・エリントンやセロニアス・モンクの曲が、流麗なピアノと味わい深いアレンジでよみがえる。泥臭さと洗練、古さと新しさの見事なバランスには、デキシーランドを好きな人はもちろん、ジャズ・ファン以外にも開かれた世界が感じられる。
 2005年のハリケーン「カトリーナ」の復興を支援するプロジェクトにも参加するなど、地元に根ざした音楽家らしい作品である。(西日本新聞117日朝刊)

「音のある休日」#15

February 5th, 2010

「フロム・ザ・グラウンド」
 ヒザー・ウッズ・フロデリック
 
Heather アコースティック・ギターとつぶやきに似た可憐な歌声に、ひかえめなピアノやストリングスが彩りを添える。まるでクラシックとフォーク・ミュージックが密やかに融合したかのようなサウンドでデビューした彼女は、アメリカ西海岸ポートランドの出身。
 半導体、電子部品、情報産業の集積地として発展したこの町は、緯度がほぼ同じである札幌と姉妹都市。自然と調和した美しい都市計画でも知られている。そういえばこのアルバムにも静かだが熱い実験精神が流れているような気がする。
  「変えられるものを変える勇気と、変わらぬものを受けいるれ謙虚さ」とは、ポップスの世界にもある。さて、来年はどんな音に出会えるか?(西日本新聞1227日朝刊)

WOOD/WATER ZINE

January 24th, 2010

Rimg0022 ”WOOD/WATER ZINE”の第2号が届いた。Autumnleafというユニットで音楽をやっている石井君が仲間と発信しているリトル・プレスである。石井君には去年AU REVOIR SIMONEのコンサートが縁でorganに来てもらうようになったのだと思う。自分たちが気に入ったミュージシャンのコンサートも企画していて、先日住吉神社の能楽堂で行われたTim Kinsellaのライブは楽しみにしていたのだが、あいにく風邪を引き見逃してしまった。そんなことはさておきジン第2号。Kinselaのインタビューから始まり、うきはの山奥にあるスモーク・レストラン「IBIZA」、塩川いづみさんのイラスト、カルチャーマガジン「AFTER HOURS」の小特集、そして小生の恥ずかしインタビューなどで構成されている。地域のコミュニティの動きと、グローバルな好奇心がどうシンクロしてゆくのか、これからも楽しみ。

エリック・ロメール

January 15th, 2010

Rimg0021-2 エリック・ロメールは生涯で25本の長編映画を残したが、観ることができたのは17本。最初の取っつきにくさが去り、好きになってしまうとほとんど中毒になった。初見は1982年に制作された「海辺のポーリーヌ」。「喜劇と格言劇」と呼んだシリーズの3作目。ヴァカンスを舞台に、延々と続くおしゃべりと日常のささいな出来事を、たまたまそこにカメラがあったかのように一見無造作に追ってゆく。それまで観たどの映画とも違うフランスだった。その後さかのぼって観た「六つの教訓話」シリーズの中の「モード家の一夜」では、煮え切らないジャン・ルイ・トランティニアンに我が身を置き換え、「クレールの膝」のエロティシズムにドギマギした頃にはすっかりロメールの術中にはまっていた。忘れられないのは1984年の「満月の夜」。ポンパドールがお似合いだったパスカル・オジェの実像さながらに不安定な様子と、エリ&ジャクノのキュートなエレポップ。丁度フラットフェイスのアルバムを作っていた時期と重なり、フラジャイルでルナティックだったあの時代の記憶と符合する。インディペンデントな動きが活発化した80年代、インディビジュアルな映画も元気だった。100才過ぎても、映画撮っていて欲しかった。

「よし田」の鯛茶漬け

January 13th, 2010

Rimg0007-1「よし田」は、天神にある割烹の店なのだが、ボクはもっぱら昼メニューの鯛茶漬けでお世話になっている。天ブラをして昼時になり、ふと思い出しては立ち寄ってしまう。「正福」の焼き魚もいいが、酒を飲んだ翌日に汁物が欲しくなった時に頭に電球が点くようにひらめいてしまうのだ。で、これが滅法旨い。どう旨いかというと、二度旨いのである。
 まず一度目は、秘伝のごまだれに浸され、海苔とワサビが載った鯛を良くかき混ぜたあと、箸でつまみ上げ、ご飯のおかずとしていただく。ここでは、いきなり茶漬けに行くことは、一応御法度なのである。ぷりぷりした鯛の切り身が、おひつの中で適度に水分が飛んだホクホクのご飯に突撃命令を下だす。もうこのまま食べ続けたいという衝動と戦いながら、あっという間に一膳目が終わる。二膳目のご飯は鯛がまだ半分以上残っていることを確かめつつ、かなりたっぷりめによそう。そして、未練がましくまたお刺身定食を続け、いよいよ鯛が残り半分になった頃合いを見計らって、急須に入った熱いお茶を一気に注ぎこんでしまう。これで安心、という感じで沢庵を一切れ口に入れた後、遂に決戦の時を迎えるわけである。まあ、実況中継はこれくらいにしよう。二度目の旨さは、もはやはいわずもがなだろう。どんなブイヤベースも相手にならない世界最強の”お米入り突然魚スープ”に我を忘れる至福の時間が約束されている。
 
Rimg0011-3 そうそう、「よし田」はこざっぱりとした店内のしつらえも魅力のひとつ。まるで小津安二郎の映画のセットのようにキチンとしていて、とても気持ちがいいことも書き添えておこう。

毛玉のシャギー

January 5th, 2010

 
Rimg0021-1 確か中学生くらいの時だろうか、ご多分に漏れずアイビー・ルックの洗礼を受け、アメリカ東海岸の大学生ファッションに目覚めたわけだ。僕は、市内にあるアメリカ文化センターで開かれていた無料の英会話教室に、短期間だけ通っていた。先生は、まだその頃は存在していた春日原の米軍キャンプに所属する若い兵隊さんだった。ところがその先生、いまでは考えられないことだが、授業の途中でセーターの首に手を突っ込み、下に着ているボタンダウン・シャツの胸ポケットからやおらタバコを取り出して一服するのだ。それも、Vネックならまだしも、クルーネックなのだ。「なんて乱暴で、カッコイイ・・」、僕は唖然とした。それも一回ではなく、授業中多分3回くらいはその動作を繰り返していた。当然のようにセーターの首はちょっと伸びていたのだが、そこが又良かった。色は薄いグレーだったか、ちょっとダランとした感じはシェットランドだったに違いない。  
 その後、うっとりするようなアンソニー・パーキンスの着こなしや、いかにもニューヨーカーなウディ・アレンのシェットランド姿をスクリーンで見ることになったのだが、あの若い兵隊さんを越えるものではなかった。肘や脇の部分がすっかり毛玉になったセーターは、なんだか身体の一部みたいだった。そういえば、「シャギー」ってもともとシェットランド・セーターがだんだん毛玉だらけになった様子を指していたらしい。イギリスでは、そうやって親が子に伝えたものらしい。この冬は2枚のシェットランドを手に入れた。さて、立派な毛玉のシャギーに育てることが出来るのやら。その前に、問題は虫食いなのだが。

「音のある休日」#14

December 25th, 2009

Olafur 1(2) オーラブル・アルナルズ / ファウンド・ソングス 
 レコード屋で「ポスト・クラシック」と銘打ったCDを見かけた。試聴するとピアノとヴァイオリン、そしてチェロがとても心地いい。迷うことなく即買いしてしまった。
 「クラシックの次」といったカテゴリーなのだろうか、確かにポップス好きの人にも充分アピールしそうな明快さがある。ピアニストであるオーラヴル・アルナルズはアイスランド出身。余分なものをそぎ落とした静謐な音に、北大西洋の澄み切った空気を感じることが出来る。
 そろそろ師走。何かと気ぜわしいこんな時だからこそ、あえて椅子に座り、ゆったりと音楽に身をゆだねる時間が欲しい。無理な相談だろうか?
(西日本新聞1213日朝刊)

Homemade Music

December 24th, 2009

Rimg0047-1 東京で長い間音楽関係の仕事をしていたHさんが、つい最近福岡へ居を移した。その彼がCDをドサッと貸してくれた。見ると、そのほとんどがアメリカの、それもルーツ・ミュージックみたいなものが多い。ピート・シーガーやニッティ・グリッティ・ダート・バンドなど聴いたものもあるが、そうでないものもある。その中にデヴィッド・グリスマン関係のものが3枚あった。ジョン・セバスチャンと一緒のやつは聴いていたのだが、残りの2枚はいずれもジェリー・ガルシアとの共演で、前から気になっていたもの。まずタイトルに惹かれ聴いたのは1993年発表の”Not For Kids Only”というアルバム。ガルシアの優しい歌声とグリスマンのマンドリンやバンジョーでトラッドを子供に聴かせる趣向だが、確かに大人が聴いてこそ楽しめそう。もう一枚の”The Pizza Tapes”のほうはブートレグで流通し、デッド・フリークの間で密かに愛聴されていたもので、高田渡さんが生前Hさんに「ぜひ聴くように」、と薦めたCDらしい。リラックスした中にも名手達の息づかいが聞こえるようでとても素晴らしい。「天国の扉」や「朝日の当たる家」なんて名曲からマイルス”So What”まで飛び出すのだからタマラナイ。ザ・バンドで聴き馴染んだ”Long Black Veil”にはひとりグッと来てしまった。70年代はヒッピー気分で聴いていたものだが、実はホームメイドな雰囲気を持つアメリカならではの音楽なのだと合点する。

EVERESTのセーター

December 13th, 2009

 やっぱり穴が空いていた。しかも、よりによってEVERESTのセーターなのだからしゃくに障って仕方がない。といっても、キチンと防虫剤を入れなかった自分のせいだからあきらめるよりない。ビームスのスタッフに聞いたら、やはり虫というものは柔らかいウールから先に食ってしまうらしく、スメドレーなんかは大好物だとのこと。そういえば、安物は全部無事である。それにしても、これは奥さんからのプレゼントだったはず。ここはダメージ加工だと開き直り、かまわず着てしまおう。と思っていたら、レンガ色の新しいヤツをプレゼントしてもらった。こんどこそ、大切に着なければ・・・。